「駒」から「人物」へ 印象に残るPCをどのように生み出すか


TRPGを定期的にプレイしていると、沢山のプレイヤーキャラクターを作ります。しかし、そのほとんどは、その時は楽しくても、記憶には残らないものではないでしょうか。TRPGは元々ウォーシミュレーションゲームの発展として生まれたもので、プレイヤーキャラクターを完全に駒としてプレイすることもできますし、それでも十分楽しめます。しかし、ほとんどのシステムでは、性格や背景、好き嫌いなどを決めてプレイヤーキャラクターを作ります。これらは、TRPGのキャラクターは単なる駒ではなく、「人物」として作られていることを意味します。

そこで今回はプレイヤーキャラクターの「人物」としての側面に注目し、どうやってそれを活かし、個性ある人間として演出するかについて考えてみたいと思います。それによって、セッションが終わると忘れてしまうような道具ではなく、愛着が沸き記憶に残る存在となるのでは無いでしょうか。

最初に書かなければならないのは、プレイヤーキャラクターは「人物」としてプレイされなければならない、と言いたいわけではないということです。TRPGには「ロールプレイング」と「ゲーム」の二つの側面があり、あえて乱暴に切り分けると、前者を追及すると各プレイヤーがなりきって演じる演劇に近くなり、後者を追及すると駒を使って遊ぶシミュレーションゲームに近くなります。これについては色々な好みがあり、どちらであるべき、といいう話をしたいのではありません。両者の融合としてのTRPGを楽しむ為に、「ロールプレイング」の要素をどのように上手くセッションに取り入れるかということを考えたいと思っています。


自分の過去のセッション運用を振り返ってみると、プレイヤーキャラクターが人物として振舞う機会は、実は相当少なかったということを改めて感じます。典型的なセッション(シナリオ)の流れを見てみましょう。

1.導入。NPCなどから依頼を受ける。
2.展開。情報を収集したり課題を解決したりして話を進める。
3.クライマックス。最大の課題(たいていの場合シナリオで一番強い敵)に挑む。
4.エンディング。話をまとめる。

これを見ると、キャラクターのユニークな人間的特徴を発揮する場が少ないことが分かります。情報の収集や課題の解決は、クラス、スキルといったキャラクターのデータ的な特徴によって解決されることがほとんどだと思います。その際たるものが戦闘で、これはほぼ完全にデータに基づいて解決されるシーンです。こういった展開ですと、キャラクターの人間的特徴は、それがデータとしてゲームに反映されるものでない限り、埋没してしまいます。

では、どうすれば人間らしさを引き出すことができるでしょうか?私は、プレイヤーキャラクターと他のキャラクター(プレイヤーキャラクター、ノンプレイヤーキャラクター問わず)の間のコミュニケーションを盛り込むことが一つの鍵だと考えています。例えば、依頼者であるノンプレイヤーキャラクターとの会話。そこでの話の運び方、対応の仕方は例え結果が同じでも、千差万別の可能性があります。そういった要素の積み重ねを通じて、プレイヤー自身、他のプレイヤー、そしてGMもそのキャラクターがどのような「人物」なのか、認識していくことができます。

ただ、私は実はこれはプレイヤーとしてはとても難しいことで、普通はいきなりやれと言われてもなかなか上手くできないものだと思います。例えば、私は多くのセッションで、キャラクターの自己紹介を最初に導入しました。でも、そこでキャラクターに入り込んでせりふを言っても上手く行かないし、どう紹介して良いかわからずデータ的な特徴だけさらっと説明するだけで終わりにすることも多かったと思います。その後、依頼人などのNPCとの会話でも、通り一遍の情報を聞き出した上で、はい分かりました、行きましょう、で終わることが多いと思います。これらのシーンはセッション中の数少ない「コミュニケーション」の場で、本来はキャラクターの人間的な側面を浮き上がらせるはずなのに、どうして上手くいかないのでしょうか。

まず一つは、個性的なキャラクターをいきなり作り出すことは、とても難しいということだと思います。近年のシステムでは、性格の特徴や背景など、キャラクターを個性化する要素が多くあります。ただ、それだけ要素があっても、それを元にいきなり完全でユニークな人格を作れる人はそういません。それをするためには、個性が表現しやすいようなシチュエーションを、セッションの早い段階でGMが用意することが重要です。そこでの行動や発言を積み重ねるなかで、少しずつキャラクターの個性を作れば良いと思います。

この部分は、できる限りキャラクター毎にするのが良いと思います。普通の環境では、プレイヤーによって積極的な人とそうでない人がいると思います。全員一緒にしてしまいますと、積極的な人のキャラクターだけが目立ちます。また、他のプレイヤーキャラクターの行動や発言を客観的に見ることで、印象に残りやすいのではないでしょうか。

もう一つは、お互いに人間関係がはっきりしない状況では、人は無個性にしか振舞えないということです。例えば、初対面の人とは、どんな性格の人でもある程度礼儀正しく接します。人間は千差万別ですが、一回短い時間あっただけで相手の個性が分かることはほとんどありません。つまり、ノンプレイヤーキャラクターとの出会いが、毎回このような「初対面」的な状況だと、プレイヤーキャラクターを担当するプレイヤーも、ノンプレイヤーキャラクターを担当するGMも、お互いキャラクターの個性を出せる手がかりが無く、通り一遍の会話のまま終わってしまう可能性が高いのです。これを改善するには、プレイヤーキャラクターとシナリオ上重要なノンプレイヤーキャラクターとの間で、事前にかなり分かりやすく人間関係、エピソードを設定しておき、それを手がかりにするのが効果的だと考えます。

簡単にポイントを整理してみましょう。

●セッション導入時に、いきなり自己紹介ではなく、キャラクター個人個人の性格や背景が表現しやすいような個別の舞台を設定する。

●プレイヤーキャラクターと他のキャラクター(特にノンプレイヤーキャラクター)の人間関係やエピソードを、分かりやすく設定して提示する。

つまり、何の手がかりもなくいきなりプレイヤーにキャラクターがどういう人物か表現してもらうのではなく、はっきりとした人間関係や状況設定を用意し、その中で他の人物とのコミュニケーションをそのキャラクターがどのように行うのかをプレイヤーに表現してもらうことで、プレイヤー自身にとっても表現がしやすくなりますし、周りのプレイヤーにとってもそのキャラクターの人格を認識しやすくなるはずです。

そしてこれをセッションの最初で行っておけば、後はセッションが進むにつれてキャラクターとしての個性的な発言や行動が積み重ねられたり、他のプレイヤーがキャラクターの行動をそのキャラクターの個性に基づくものと認識するようになり、「人物」としてのキャラクターが自然に成長していくはずです。

キャラクターに入った演技である必要は無いと思いますが、ある程度キャラクターとしての発話があった方が印象は強まると思います。できれば事前に各プレイヤーの嗜好を把握しておいて、苦手なプレイヤーには無理にキャラクタープレイの要素を取り入れないようにするのが良いかと思います。

ナイトウィザードではノンプレイヤーキャラクターとのコネクションが明示された「シナリオハンドアウト」として2番目のポイントがルールとして用意されています。また、オープニングで、プレイヤーキャラクターが事件に関わることになる背景を演出するシーンを設けることが推奨されています。これらのテクニックは、各キャラクターが個別に生活を送り、事件の為に集まってくるナイトウィザードの世界観にとても合っています。

逆に、キャラクターがまとまって旅をする一般的なシステムでは、毎回これをすることは難しいかもしれません。それでも、キャンペーンの最初でパーティを組むときにこのようなテクニックを使うのは十分可能
と思います。キャンペーン途中のセッションの導入でも、街や村に滞在している間の個別行動として演出する方法もありそうです。

シナリオを用意するGMにとっては手間が掛かりますが、上手くいけばかなり充実感のあるセッションになるのではないかと思います。まだまだこの段階では仮説に過ぎないので、実際にセッションで試して、効果があるかないか、どういうところが難しいか、検討してみたいと考えています。このテーマは追求しがいがありそうなので、今後も色々と考えていくつもりです。

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「駒」から「人物」へ 印象に残るPCをどのように生み出すか」への1件のフィードバック

  1. [PC]キャラクターとのおつきあい

    そこで今回はプレイヤーキャラクターの「人物」としての側面に注目し、どうやってそれを活かし、個性ある人間として演出するかについて考えてみたいと思います。そ…

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