「Plot&Structure」から学ぶシナリオの設計法


1週間かけて、James Scott Bellの「Plot & Structure」を読んでいました。この本は、小説を書きたい人に向けて、小説の書き方の技術を説明するシリーズの1冊です。小説とTRPGは違うものですが、小説の組み立て方を読むと、TRPGのストーリーを作る上で参考になることが沢山あります。2〜3回に分けて、この本から学んだことに自分の経験から付け加えて、TRPGで良いストーリーを組み立てる方法について議論したいと思います。


この本によると、良い物語を構成する要素は、以下のように考えることができます。

    プロット:主人公、目的、障害、大団円
    構成:3部構成、2つの決定的瞬間

プロットと構成は似ていますが、プロットは話の筋を構成する要素、構成は展開の仕方に関するものです。良いプロットには、魅力的な主人公、主人公が持つ強い目的意識、主人公の目的達成を脅かす障害、最後に大きな戦いを超えての大団円を迎えるということが要素として必要です。

TRPGでは、GM一人が物語を作るのではありませんので、小説と違い、プロットの組み立てはプレイヤーとの共同作業です。主人公はプレイヤーが表現するもので、目的はプレイヤーとGMの共同作業です。どのような障害に直面するか、どのような大団円を迎えるかは、GMの作業になります。このように、プロットの要素は、プレイヤーとGMの分担になります。

3部構成、2つの決定的瞬間というのは、序盤、中盤、終盤があり、その間に、後戻りできないような決定的な瞬間が1つずつあるということです。これはシナリオを設計する際にGMが考慮することです。この記事では、この3部構成と、プロットの中でGMが準備段階に設計しておくべき部分について考えてみたいと思います。

TRPGの物語は、プレイヤーが参加して一緒に作り上げるものです。ですから、シナリオを設計するGMは、物語としての構成を考えながらも、プレイヤーの意思決定を奪わないという、一見矛盾した課題を抱えます。ただ、これはプロットと構成それぞれの要素をみていくことで解決できます。

プレイヤーは主人公を担当しますし、主人公の持つ目的、動機付けに関して、当然好みがあるはずです。GMは主人公の目的がシナリオの目的と沿うようにプレイヤーと相談しながら決めることができますし、どのような障害に直面するか、どのような大団円を迎えるかは、GMの担当範囲です。構成を見ると、3部構成は大まかな構成を決めているだけで、それぞれの中身がどうなるかは、共同作業でできることです。ですから、GMはシナリオの目的とPC達が出会う障害を決め、最大の危機とその結果を決め、さらに3部構成とそれぞれの部分でどのようなことが起きるかラフに考えておき、PC達が必ずくぐり抜ける2つの決定的瞬間がどのようなものになるか、押さえておけば良いということになります。

こうすれば、プレイヤーにプロセスを選ぶ自由を与えつつ、3部構成、2つの決定的瞬間という物語の構成要素を押さえることができます。ただ、これはある程度(どの程度かは個人の好みの問題ですが)その場でGMがシーンを生成することを意味します。それを容易にする為には、NPCがどういう動機や背景を持っているか、そしてこれまでに起こったことを詳しく決めておくのが良いかと思います。これができていれば、PCの行動に応じてNPCがどのように行動するか、何をすれば先に進む為のヒントが得られるか、その場で考えやすいと思います。シナリオの中で起きることは、いくつかのパターンでラフに考えておけば良いかと思います。

シナリオ設計を議論する場合は、TRPGに特有の問題であるプレイヤーの先読みについて触れなければなりません。これは小説では問題にはなりません。というのも...

・読者が先の展開を知っていても主人公は知らないので、ドキドキして読める(小説)
・プレイヤーが知っている=PCが知っている(TRPG)

という大きな相違があるからです。本には当然このことは書かれていませんが、自分の経験から加筆したいと思います。

プレイヤーに先を読まれてしまうと、GMが用意した3部構成が崩れてしまいます。これはプレイヤーにとってもGMにとってもあまり良くない結果です。GMがその場で機転を利かせれば良いのですが、できれば設計段階からそれが起こりにくいように考えておく方が良いはずです。先読みしにくい構成とは、元々先読みしにくい展開のシナリオ、あるいは正確に先読みできる情報が揃わないシナリオです。

私たちは、非常に多くの物語に接しています。ですから、物語がどのようなパターンで展開するか、かなりいろいろな展開を既に知識として持っています。ですから、シナリオがそのパターンにはまってしまうと、先読みのリスクが高くなります。物語を考えたときに、最初に浮かんでくるようなパターンは、「よくあるパターン」である可能性が高いはずです。いくつか別のパターン、別の展開を考えてみるのはどうでしょうか。ユニークで予想を裏切る展開を先に考えて、そういう展開になる理由は後で考える方が良いでしょう。

もう一つの方法は、正確に先読みできる情報が揃わないようにシナリオを構成する方法です。これには2つのパターンがあります。

・途中で新しい大きな展開があるシナリオ
・「氷山の一角」手法

シナリオは普通の展開で始まるのですが、途中で全く別の新しい展開が起こるというのが、最初のケースです。「氷山の一角」手法というのは今考えた言葉です(笑)。これは、PCが最初に出会う事件は、もっと大きな事件が進む中で、その一部として起きたもの、という作り方です。最初の事件を解決するなかで、その上にもう一つ大きな事件があることが徐々にわかってくる、という感じになります。予想外の展開を作る為によく「依頼人が裏切る」ということが使われると思いますが、それに加えてこういったテクニックを使うことで、シナリオの幅を広げつつ先読みしにくい展開を作れると思います。

さて、「Plot & Structure」を参考にしながら、序盤、中盤、終盤を物語として面白くする為に、どういった準備ができるか考えてみましょう。

序盤では、とにかく最初から、最初の文から魅力的なものにすることが大事だと本では書かれています。小説の場合は、読者はいつでも本を読むのを止めることができますので、どうやって興味を引き起こし、つなぎ止め、読み続けさせるかということが重要です。ただ、TRPGの場合は、最後までプレイするということはある程度保証されています。ですから、小説と同じレベルまで気を使う必要はありませんし、そこまでGMがコントロールするべきではありません。ただ、プレイヤーに物語により深く関わってもらう為に、小説のテクニックは参考になると思います。

導入部は、魅力的にすることが必要です。その為に使える方法は、いくつかあります。動きのあるシーンから始めること、NPCの生の感情を表現することです。ストレートでビジネスライクな依頼ではなく、例えばNPCが危機に瀕していてそれを
救うシーンから始まるとか、依頼の背景にあるNPCの個人的な感情を表現するなどの方法ですね。

小説であれば、主人公に対して読者の感情移入を誘ったり、主人公の行動を通じて、世界観や雰囲気を表現することが必要ですが、TRPGの場合、GMができるのはNPCに対して感情移入させたり、雰囲気を示すことです。具体的なキャラクターの作り方については別の機会に議論します。

人物を読者に印象づけるのに、やってはいけないことと一つとして、「リストアップ」があげられています。例えば、「このキャラクターは、まじめで、論理的で、率直で...」と言っても、人工的な印象しか残らないですよね。その代わりに、実際の行動や発言を通じて表現することが本では勧められていました。NPCをプレイヤーに印象づける為には、単にどういう人物か説明してしまうのではなく、行動や発言を使うのが良いのではないでしょうか。また、PCを印象づける為にも、同じことがいえます。「さあ、自己紹介してください」ではなく、セッションの最初にNPCとの会話で始めれば、NPCをプレイヤーに、またPCを他のプレイヤーに、印象的に説明できると思います。GMとしてはこれを序盤で準備するのが良いと思います。

そして、もちろんそのセッションでのPCの目的を定義しなければなりません。これは依頼や、PC自身の動機に基づく自発的な行動など、いろいろと方法があると思いますが、ここでは詳しく書かないことにします。

中盤に移ったら、敵の演出、登場人物が途中で逃げ出さない理由作り、話を大きくしていくこと、リスクとして死を表現することが必要だとされています。

敵は人間として表現し、グループが敵になる場合でも誰かに代表させることが、読者が感情移入する為に必要だと書かれています。TRPGの場合は、必ずしも中盤に入った段階で最後の敵が何なのか分からない方が良い場合が多いので、この限りではないかと思います。ただ、シナリオのスタイルによっては、印象的な敵との戦いを中盤を通じて描くのも一つの方法かと思います。どちらの方法を取るにしても、緊張感を与える為に、敵は強いという印象を与えることが重要です。

登場人物が途中で投げ出さず、最後まで事件に関与する理由があることが必要です。PCが止めてしまうことは滅多にないと思いますが、例えばプレイヤーが「このNPCはなぜこの事件に関わるのを止めないのだろう?」と思うことは、NPCの人間味を失わせかねません。もちろん、氷山の一角的な作り方をすると、NPCの行動の動機はプレイヤーには必ずしも明らかではありません。少なくともGM側では、NPCの行動に筋が通っていることは必要かと思います。

PCの最終的な成功と失敗によって、大きな違いが出るようなシナリオの作り方が必要かと思います。話が小さいままだと、盛り上がりに欠けてしまうかもしれません。また、失敗によって大きなリスクー誰かの肉体的、心理的、職業的、社会的な死ーがあるということは、問題への関与を強めると思います。世界の危機を扱うことが好き、ときくたけさんは書かれていますが、それは効果的な方法でしょう。

終盤では、最大の戦いを演出すること、犠牲をはらむ選択肢の提示、伏線の回収を考えることができます。

最大の戦いは、ボス戦ですね。もちろん戦闘でなくても良いのですが、究極的なリスクである死を意識させる為には、戦闘が有効です。

犠牲をはらむ選択肢というのは、どちらを選んでも何らかのものを犠牲にしなければならない、という状況です。これによってプレイヤーに悩みを与えることができます。小説の場合はストレートにこれで良いでしょうが、TRPGの場合は、その選択肢を超えて、全ての人を救える方法を用意しておかないと、プレイヤーがフラストレーションを感じるかもしれません。その選択に応じて、エンディングも変わってきます。

単発のシナリオの場合は、伏線を全て回収することが必要になります。これによって、いろいろな情報が最後に一つにまとまって、全てを理解したという満足感を与えることができると思います。もちろん、次のシナリオや今後のシナリオで使う為に伏線を残すのも有効ですね。

さて、これまでの議論は単一のシナリオについて書かれていますが、キャンペーンに関しても同じ方法を使えると思います。目的、障害、大団円を設定し、キャンペーンとしての3部構成を作りながら、各シナリオ毎に同じような形でプロットと構成を決めておく形になります。プレイヤーの行動によっても後の展開が変わるはずなので、全体については細かく決めず、大枠の情報やこれまでの動きに基づいて、次になにが起こるかを考えて1シナリオ毎に制作する方が、プレイヤーの自由度を保証できると思います。

シナリオ制作に関しては、これくらいでしょうか。次回はマスタリングとプレイヤーが受け持つ範囲について書いてみたいと思います。

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